地域の声 Voice
【分水きずな食堂】 ~手作りお弁当の販売を通じ地域の新たなご縁づくり~
「分水きずな食堂」代表 鈴木さん
(文中敬称略)
活動内容
分水きずな食堂は、令和6年度に立ち上げた地域食堂※で、月に1回のお弁当販売を通して、幅広い年代の地域の方が集まって一緒にお弁当を食べたり、おしゃべりをしたりするなどの「交流の場」として、フードバンクつばめや分水高校の学生、民生委員児童委員協議会などと連携しながら活動しています。
令和7年度は、前年度まで活動していた分水公民館が改修工事中のため、代表の鈴木さんが住職を務める勝敬寺(しょうきょうじ)で開催しています。
※地域食堂とは…地域住民が運営し、無償または低額での食事を提供を通して、地域住民の交流や居場所づくりの場としての役割を担う活動です。
●活動の一コマ紹介!
4月18日(金)、新たな試みとして、お弁当販売の前にわたあめとお菓子を配布しました。 当日は、子どもたちが親御さんと一緒にわたあめをもらうとお堂に入り、受付で好きなお菓子と交換できるチケットを受け取り、どれにしようかとお菓子の並んだテーブルの前を行ったり来たりしていました。
境内では、お弁当販売の開始を待つご近所の方がおしゃべりに花を咲かせます。その中の一人の方に尋ねると「この前食べたお弁当がとてもおいしかったのでまた来ました。一生懸命に作ってくれているので楽しみにしています」とにこり。
お弁当の販売時間には境内の端までお客様がずらり。30分足らずで売り切れ、活動が地域に定着していることがうかがえました。

地域の課題に向き合い、幅広い世代に向けた活動に!
2020年に新型コロナウイルス感染症の流行を機に、自分が所属する浄土真宗本願寺派から、貧困について考え、子どもたちのためになる活動をするようにとの通達があり、燕市の出前講座を受講しました。その時に、貧困は見えづらいけれども身近な課題であると感じました。そんな折、フードバンク連絡協議会とフードバンクつばめから声をかけられ、両団体と協力して、貧困家庭へ無償の食材提供を行う「フードパントリー事業」を始めました。活動するうちに、分水地区は子ども食堂や地域食堂がないことから、2023年から食堂の立ち上げに向けて動き始めました。
また、日頃接する一人暮らしの高齢の方たちから、「1人分の食事を準備するのが面倒で、コンビニ弁当などで済ませてしまう」と聞きました。高齢者世帯が多い地域でもあり、月に1回家庭料理を味わう機会が作れればとの思いから、子どもだけでなく高齢者も来やすい地域食堂として始めることにしました。
一生懸命に考えたぬくもりあるお弁当でほっとできる時間を
活動当初は、今までやったことがない100食分のお弁当作りに苦労しました。給食センターで働いた経験のあるボランティアからアドバイスをもらい、何とかできました。
また、毎回妻が試作品を作って、メニューの組み合わせや味付けを決めてくれています。最初は子ども向きのおかずにという意見もありましたが、今の子どもが食べる機会の少ない煮物などを1つは入れることで、食育にもつなげています。
お弁当を食べてくれた一人暮らしの高齢の女性の方から、「人から作ってもらったのを食べるのは久しぶりだった」との声をいただいた時は衝撃を受けました。月1回でも、手作り感のあるお弁当でほっとしてゆっくりする時間を過ごしていただければと思います。

予想以上に広がっていった支援の輪
活動してみると、協力したいと言ってくださる方がたくさんいることに驚きました。始める前は活動ボランティアが集まるか不安がありましたが、実際に声をかけてみるとたくさんの方が手をあげてくれました。今では皆さん、楽しそうに活動しており、私もうれしいです。
現在、民生委員児童委員、フードバンク、高校生など多様な団体が活動を支えてくれています。フードバンクつばめとは、フードパントリーの時からの縁です。分水高校ボランティア部とは、分水ロータリークラブが分水高校の生徒と一緒に作ったお米をフードパントリーに提供してもらった縁から、協力していただくことになりました。冬は同校カヌー部の学生も手伝いに来てくれます。

また、本当に困っている方はそのことを他人に知られたくないと思っています。「地域食堂は困っている人が行く場所」と思われていることが多く、誰でも来れる場所であるという認識を広めるため、地域の方と接する機会の多い民生委員・児童委員に開催案内のチラシ配布をお願いすることにしました。
食材についても、寄付が多く助かっています。当初、米を農家からいただくくらいでしたが、その後、青果市場や知り合いの豆腐屋からも寄付をいただくようになり、とてもありがたいです。また、お弁当を買いに来た方からも調味料を提供していただき、思わぬ広がりもありました。
地域のつながりを深め、子どもたちの記憶に残るあたたかさを届ける
1月にきずな食堂の活動とは別にもちつき大会をしたところ、大半が子ども連れの家族でした。誰でも来てください、とうたっていることは同じでも、きずな食堂に来る子ども連れは全体の4割くらいです。今後、きずな食堂でも子ども向けのイベントもやっていけたらと思っています。
また、地域のつながりという点でいえば、活動に協力していただいている方とのつながりはもちろん、買いに来た方同士も「久しぶり」と声をかけ合う姿を目にします。近所の方同士でも顔を合わせる機会が減ってきている中で、きずな食堂に来ることで生まれるご縁もあると感じています。飲食スペースで食べながらしゃべっていく方を増やして、地域のきずなを深めていきたいですね。

今後の目標としては、スタッフも利用者も喜べる活動として、長く続けていくことです。分水きずな食堂が新たな地域のコミュニティの場となればいいと思っています。加えて、子どもたちが大人になったときに「いい地域だったな」と振り返ることができる、思い出の一つになってくれればと思っています。子どもの孤立は地域だけでなく全国的な問題ですが、子どもたちに「味方がいる」ということが伝わればと思います。
最後に、コミュニティの希薄化は全国的な課題で、自分たちの地域だけが良くなっても不十分です。今は行政やいろんな団体の協力体制が整っているのでこのような活動は踏み出しやすくなっていると思います。小学校区に1つこういう地域食堂ができたらいいと願っています。