地域の声 Voice

【えんかむ塾】 ~学びたい気持ちと交流を大切にした居場所づくり~

「えんかむ塾」 T代表、S塾長、H先生

※当該人の希望により氏名は表記しません
(文中敬称略)

活動内容

「えんかむ塾」は、市内の障がいのある方や、不登校の生徒などを対象に勉強等を教えているボランティア団体です。一人ひとりの個性や学びたい気持ちを大切にしながら学習を支援するとともに、カロム大会や遠足など楽しく交流できる活動も企画しています。

「えんかむ塾」の公式HPはこちら!

活動の一コマ紹介!

 8/30(土)に市民交流センター多目的ルームで行われた活動にお伺いしました。活動開始前に、先生方が新しく入塾することになった塾生の授業の進め方について熱心に話し合っていました。この日は、日頃の学習日とは趣を変えて、「カロム*」というボードゲームで遊びました。よく狙いを定めてストライカーを指で弾き、当たると対戦を見守る方からも歓声が上がり、白熱したひと時となりました。

* カロムとは…2色のパック(木のおはじきのようなもの)を円状に並べ、お互いにストライカー(打ち玉)を指で弾いて自分の色のパックにぶつけボードの四隅に落として得点を競うボードゲームです。

勉強が好きな子どもの居場所を作りたい

――どのようなきっかけで「えんかむ塾」を立ち上げることにしたのでしょうか? 

【T代表】
 障がいのある自分の息子が中学生だった時に、休み時間にも数学の勉強をするほど数学が好きでした。中学校の数学課程がひと足早く終了し、担任の先生に高校の数学Iの参考書を買っていただき、先取りで学習をするほどでした。息子の学校には、現在塾の先生をしていただいているH先生がいて、「勉強を続けたほうがいい」と言ってくださいました。

 しかし、中学校を卒業して特別支援学校に入学すると数学の勉強をする機会がなくなってしまいました。

 そんな時に東京や神奈川では、障がい児・者の塾があると聞きました。「誰かがそういう活動を始めてくれないかな」と思う気持ちもありましたが、それ以上に自分の子どもに自信をつけさせてやりたい、好きな数学を勉強する場を作ってやりたいという気持ちが強く、子どものために学習する場、仲間づくりの場を作ろうと決めました。

 同い年のお子さんがいることでつながりのあった、現在の副代表に「一緒に塾を作ってみない?」と声をかけると快く受けていただき、一緒に「えんかむ塾」を立ち上げることにしました。

 最初はどのように始めたらいいのか分からず、まず副代表と市役所へ相談に行きました。その時担当してくださったのが今のS塾長です。自分のフェイスブックで「塾を立ち上げたい」と呟いたら「いいね」を押してくれたので、一緒に活動しましょうとスカウトしました。また、塾の立ち上げについて相談したら、H先生が一緒に活動してくださることになりました。

 団体名に「塾」とついていますが、ただ部屋の中で勉強するだけの活動にはしたくないと思い、遠足やお楽しみ会などの企画をしています。8月は暑く集中しづらいので、勉強するよりもカロムをやろうと大会を企画しました。でも、かえって盛り上がり熱くなってしまいました(笑)

細く長く、縁の下の力持ちとして支えていく

――S塾長は日頃どのように塾の運営に携わっていらっしゃいますか。

【S塾長】
 日頃は宿題を見たり、学習を見守ったりしています。自分のノートを見られたくない塾生もいるので、そういった子はさりげなく見守るようにするなど、一人ひとりに合わせて勉強を見るようにしています。

 遠足の企画も担当しています。
 遠足は年2回行っており、春は電車で近場の資料館などに行っています。社会生活の練習として自分で切符を買ったり、展示を見たりして興味の幅を広げ、学びにつながるようにと企画しています。
 秋は名所や旧跡など学びの場になる場所を選び、それに加えて、お土産屋や食べ物屋など、大人も子どもも楽しめる場所も旅程に入れています。塾生が親子で参加できるよう、燕市社協からマイクロバスを借りて行くようになりました。バスはボランティアの方に運転してもらっています。今年は、福島へ行く予定です。コロナ禍前から計画していたものの、コロナが流行したことで中止になりました。今回はリベンジですね。

 計画を立てる時に気を付けているのは、行く場所について事前にしっかり調べることです。例えば、大きい音が苦手な塾生もいます。そういう子が入りにくいような場所は避けるようにしています。それでも想定外のこともあるので、外出中は目を離さないよう注意しています。また、時間管理にも気を付けています。塾生たちがついつい長居したくなる場所もありますが、次に行く場所が閉まっていた、など旅程に影響が出るといけないので、自分が時間をしっかり見ておくようにしています。縁の下の力持ちとして活動を支えています。

一人ひとりの学びたい気持ちに寄り添う

――H先生は塾生に勉強を教える時、どのようなことを大切にしていますか。

【H先生】
 本人の勉強したい気持ちを大切にしています。生活していくのに必要な算数的なものに加えて、英語や数学など、その子が学びたいことを教えています。一番素晴らしいのは本人にやる気があることです。難しい問題も嫌がらないで取り組んでいます。子どもたちが意欲的に勉強している姿を見てやりがいを感じています。
 勉強はあまり好きじゃない子も多いと思いますが、その反対で塾生たちはとても熱心に勉強に取り組んでいます。

 ある塾生は、短歌を作るのが好きで、毎日日記のように書いています。その子は話すことがあまり得意ではありませんが、書いて表現するのは得意なんです。好きだからこそ嫌がらずに自分から進んで取り組んでいます。
 これからも塾生一人ひとりがやりたいことを大切にしていけるよう支援していきたいと思っています。

楽しく学べる居場所として地域に広まるように

――活動開始からもうすぐ10年です。感じた変化はありますか。

【T代表】
 変化したことは、やっぱり居場所ができたことですね。自分の子どもに関しては塾をすごく楽しみにしているようです。時間にルーズなところがあるのですが、「今日は行かないの?」と聞くと「待ってー!」と急いで支度をしています。楽しい居場所ができて良かったと思っています。
 新しい塾生は、お試し入塾の初日から3回目まで嫌がらずにスーッと入ってくれて「居場所になって良かった~」と思っています。
 小さな塾で、これまでは分水地区の子どもだけでしたが、燕地区の子も増えて活動も広がってきました。これからもっと塾生が増えていくといいと思っています。

――今後の目標を教えてください。

【T代表】
 この活動がもっと広まってほしいと思い、「えんかむだより」を発行しています。なかなかPRの場がないので、今は離れて東京にいる先生にお願いして、ホームページやフェイスブックでも活動の様子を伝えています。パソコンが苦手なので、えんかむだよりは手書きで作っていますが、今の時代、かえって手書きの方が目を惹くようです。題字は息子に書いてもらっています。

 私自身がいじめられた経験があるので、資格を持っているわけではないですが、普通の人よりも気持ちがわかるかな、寄り添えるかなと思い、不登校や引きこもりのお子さんからも来ていただけるように募集のチラシを書いています。

 東京にいる先生や、バスの運転手の方のほか、ボランティアが好きでたまに来てくれる方もいます。たくさんの方に支えられて活動を続けられています。今は子どもより支援者の大人が多いので、これからは子どもにもっと来てほしいと思っています。